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【弔い最新事情 墓はどこに】(中)形態多様化 思いは不変(産経新聞)

 磁気カードを読み取り機にかざし、待つこと約40秒。すりガラスが開き、家紋と家名が刻まれた銘板が現れる。銘板の奥には遺骨が納められている。

 東京ドーム(東京都文京区)から歩いて約5分の場所にある興安寺。420年近い歴史を持つ。

 その古刹(こさつ)が、12年前に自動搬送式システムを取り入れた廟(びょう)式墓を建てた。「当時としては革新的なことで、反発も含めていろいろな反響があった」と渡辺順昭住職。

 最新の倉庫に導入されていた搬送システムを応用、約300坪(約1千平方メートル)の敷地に1万基近い墓が入る廟を整備した。現在販売中の墓は一基80万円。地方出身で東京に墓を持っていない人たちを中心に、大きな反響があった。

 渡辺住職は「『近くにあって、ちょくちょく行けるのがいい』『墓石や敷地に多額な費用をかける必要はない』。多くの人がそう考えはじめ、旧来のような形の墓にはこだわらないようになっている」と話す。

 彼岸の興安寺。磁気カードを手に参拝に訪れる人がひっきりなしだ。

 墓参りを終えた東京都豊島区の男性(70)は「都心に何百万円もかけて土地付きの墓を買う余裕はないし、無駄だと思う。かといって遺骨を置く場所も必要だし」と話す。

                 ■   ■

 身近なところに新タイプの墓を求める人がいる一方で、遠くに安眠の場を求める人たちもいる。

 島根県隠岐に平成20年、“散骨島”が誕生した。

 海士(あま)町にある風光明媚(めいび)な無人島「カズラ島」(面積約1千平方メートル)。東京で斎場に勤める島出身者らが買い取り、周辺自治体の協力を得ながら散骨場に整備した。

 構想は、東京で暮らす隠岐出身者たちが郷土会などで「ゆくゆくは、生まれ育った島に帰って埋葬されたい」と盛り上がったところから始まった。

 島に上陸できるのは原則、散骨時のみ。遺骨が眠る島を荒らさないためだ。

 遺族などが追悼するために、対岸の島に慰霊所を設けた。骨をサラサラのパウダー状にする粉骨料を含め、費用は17万~28万円。

 散骨島ができたことが知れると、島出身者以外からも問い合わせが続いた。すでに関東を中心に400人近くが資料を取り寄せ、44人が契約し、12人分の散骨がされた。

 島を管理する「株式会社カズラ」の村川英信社長は「『寺との付き合いや、墓の維持で、子供に負担をかけたくない』『独り暮らしで、墓をつくっても仕方ない』といった理由での問い合わせが多い」と話す。

                 ■   ■

 「墓地不足」「高い地価」「少子化」「単身世帯の増加」。そんな社会事情が、新しいタイプの墓を次々と登場させている。

 ロッカー式の納骨堂。多くの人が墓を共有する合葬墓、合祀(ごうし)墓。子孫が途絶えても、寺などが管理してくれる永代供養墓。墓石ではなくサクラの木などをメモリアルにする樹木葬。散骨…。今後も次々と新しい墓の形態が出てくるだろう。

 興安寺の渡辺住職は「墓の形は変わろうと、人の死や墓参は人々の宗教的感情を喚起させる場であることには変わりはない。そこを大切にしていきたい」という。寺では、勉強会やコンサートなど、人々の生き方を豊かにするためのさまざまな活動をしている。

 カズラの村川社長は「肉親の散骨をした若夫婦が、島を離れるときに、いつまでも島に向かって手を合わせていた。散骨も、弔う人への思いが十分にあふれてくる供養形態なのだ」と話す。

 弔いの形は変わろうとも、人々の弔いの情操に変わりはないことを2人はみている。

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